カンチの3ポイントシュート

ゴールの遥か手前で無残にも失速する3ポイントシュート

能力を使ってヒーローになることを画策する高校生の話

   

 

第2話!「ビヨンビヨンの能力」を使ってDK(男子高校生)が華麗にDK(ダンク)!

 

我輩は特殊な能力を所持している男子高校生である。
名前は…。

忘れた!そして誰も俺様の名前を知らねえ!

前回、代田にぶん殴られて記憶を失った。

 

「また、あなたですか…。」

厄介者が来た、とばかりに看護婦が露骨に嫌な顔をする。

俺様は自分の記憶を取り戻すべく、こうして毎日病院に通っている。

だが記憶なんか、そう簡単に戻るはずもない。

なぜなら、この病院は小児科だからだ。

看護婦が嫌な顔をするのも頷ける。

しかしこの街には、この小児科しか病院がねえんだ!
まったくシケた街だぜ…。

 

幸いなことに名前以外のことはよく覚えている。

俺様はとにかく、極上の男。
エクセレントな男ってことを。

超絶イケメン!

けん玉がわりかし上手い!

視力が0.5!

記憶力がいい!

一度覚えたことは忘れない!

な~んて、ユーモアも兼ね備えたイケてる男だ。

そして!なにより!

様々な特殊能力を持っているんだぜ!

 

体を鋼鉄にする能力とか…えっと、なんだっけ…。
…とにかく、いっぱい能力を持っているんだ!

この特殊能力を使いまくって学園のマドンナ・久美ちゃんをゲットするのが俺様に与えられた使命、命題なんだぜ。

 

で、件の久美ちゃんには彼氏がいる。それが不良の代田。

その代田を特殊能力を使って制裁し、久美ちゃんは無事、俺様の下へ…。

と、なる手はずだったんだが、色々手違いが起こってしまったのが、前回の話

 

この失敗を挽回すべく、特殊能力「時間ループ能力」を使おうと思ったんだ。

この能力は、そう遠くない過去に戻ることができる。

どうだ?時空すら超越できる俺様の能力。エクセレントだろ?

この能力を使って、代田にぶん殴られる前に戻って、改めて別の戦法で制裁してやるぜ!と、考えた。

だがちょっと待って欲しい。

 

「時間ループ」ってことは結局、過去に戻っても同じことが繰り返されるのではないか?

ということは、この能力を使っても意味がない。

聡明な俺様はピンときちゃったぜ。

そして聡明な俺様は、今のところ俺様の特殊能力が役に立たないもんばかりだと気づき始めちゃってるんだぜ…。

しかしどこまでも俺様はとことん聡明だ。

ある校内イベントと、俺様のもつ特殊能力。

この2つが化学反応を起こすと「校内の英雄」になれる化学式を発見してしまったんだぜ。

「俺様の定理」とでも名づけようか。

 

いいか。頭の悪いお前たちにも分かるように説明してやる。
目をかっぽじって、よく聞け。

まず、今日は校内バスケットボール大会が開催される。
ここで華麗にダンクを決め、大活躍すれば一躍ヒーローだろ?

そして俺様の勇姿を見る久美ちゃんの目はハートマークになる、って寸法だ。

もちろんバスケ中は特殊能力を使う。

体をゴムのように伸ばせる「ビヨンビヨンの能力」を使い、腕をビヨ~ンと伸ばす。
そしてそのまま、ダンクシュート!

な?エクセレントだろ?

あ?パクリだって?

知るか!そんなもん!

集英社に訴えられても、俺様はやるからな!

 

ーバスケの試合が始まった。

 

「ヘイ!パス!」
「ヘイ、パス!パス!」
「ナイスシュー!」

「ヘイ、パス!俺様にボール回せ!」
「…ナイスシュー!」

「ヘイ、パナイスシュー!」

 

あああああああ!ちっともボールが回ってこねえ!!!!

「透明の能力」を使わずして、存在感が皆無な俺様に、誰もパスを回さねえ!

じゃあこの存在感の無さを逆手に取ったるわ!

 

はい、はい。ちょっとボール失礼しますよ。
はい、ボールを取り上げちゃいますよ。
ほい!ボール取った

って、こら!ちょっと待て!

気づけよ!!!

この至近距離だぞ!

…こいつらわざとやってねえか?
タチの悪いシカトだよ…。

くそっ!もうシカトでもなんでもいい!
このままダンクを決めてやる!

 

「あれ?ボールがない!どこだ!?」
「あいつが持ってるぞ!」
「てか、誰だあいつ?」
「おい、部外者が体育館に入ってくるんじゃねえ!」
「いや、待て。あいつ、うちの学校のジャージ着てるぞ?」
「1-Bって刺繍があるぞ?」
「じゃあうちのクラスのやつなのか?」
あんなヤツいたか?

 

こいつら!!!
その会話、「タチの悪いシカト」よりタチ悪いぞ!!ちくしょう!

 

陰キャが調子乗るんじゃねえ!

あっ…。

俺様の手から、するりとバスケットボールが取られた。

俺様からボールを取ったリア充が華麗にダンクを決める。

湧き上がる会場。女子の黄色い歓声が上がる。

 

…くそったれが!それは俺様がやるはずだったの!

よしっ!ここはいったん「スローモーションの能力」発動!

 

俺様以外の人間の動きがスローモーションになる―。

リア充からボールを取り上げる!

そして「ビヨンビヨンの能力」で腕を伸ばし!

ダァァァァンクッ!!!!!!

 

…決まった。決まったぜ。
どうだ久美ちゃん?

 

って、誰も見てねえ!!!!

会場一体、まだリア充のダンクの余韻に浸っている。
…どんだけスローモーションになってるんだよ。

能力を使わなくても気づかれない。
能力を使ったら誰も見てない。

俺様にどうしろってんだよ!

 

あれだな。神様が嫉妬してるんだな、俺様に。
超絶イケメンの俺に、特殊能力まで与えちゃった神様が後悔してるんだな。
そして能力を使わず、「正攻法でやれ」ってお示しなんだな、きっと。

よしっ!正攻法でやってやるぜ!!!

 

試合が再開される―。

おらっ!よっしゃ!!!!

簡単にボール取れたぜ!!!やっぱ正攻法だな!
能力なんか使わなくたって、俺様はいつだってエクセレントだ!

ドリブル、ドリブル!おらおらおら!

よっしゃ!ゴール下!
ここからは能力を使わせてもらうぜ!!!

ジャァァァンプ!!!!

そして!

 

ゴムゴムのっ!!!!

あ、ゴムゴムちゃう!!!!

なんだっけ、俺様の能力の名前!!!

ゴムみたいに腕が伸びるやつ!!!

あれ!!!名前が出てこねえ!!!興奮しすぎてド忘れした!!!

 

そして空中で態勢が崩れる。

「スローモーションの能力」を使っていないのに、床のコートがゆっくりと顔面に近づいてくる…。

「時間ループの能力」を使ってないのに、この曲が脳内をループする…。

 

 

おだえいっ!!!!!

床に顔面を強打した。

俺様は海賊…王に…なる…。

…。

 

気がつくと俺様は病院のベッドにいた。

「また、あなたですか…。」

そこには厄介者が来た、とばかりに露骨に嫌な顔をした看護婦がいた。

 - 超能力少年